土曜にNHKでやっていた「国際共同制作ドラマ」『オー・ルーシー!』を観ました。
この作品は、平柳敦子さんという女性監督が21分の短編映画として桃井かおりさんを主演に作った作品を、長編映画として寺島しのぶさん主演で再度制作した作品。
映画作品は95分の所を、ドラマ版として73分にして放送されたようです。
40代の独身OL、それも覇気がなくちょっとだらしなく過ごす節子。会社でも孤独な中年女性。
その女性が、とある事から怪しげな英会話教室に通うことになり、そこで金髪のカツラをかぶって「ルーシー」と名乗ることから生活が変わっていく・・・・と
一見、コメディ風。そして中年女性の抑圧された生活からの脱出、中年の自分探し物語?と思いきや・・・これが中々の殺伐とした重たいストーリーでした。
でも、久々に映画らしい、映画ならではの重たい物語で、こういうの嫌いじゃない。むしろ映画らしい映画で忘れていた感情を思い出させてくれました。
登場人物は少数で、主演の40代女性が寺島しのぶ、その姉が南果歩。この二人の姉妹がなんともトゲトゲとした関係で、二人とも激しい性格。
そして、英会話教師にハリウッド俳優のジョシュ・ハートネット。
この方はもっとイケメン俳優でどんどん活躍すると思っていたけれど、しばらく見かけないような気がしていたら・・・結構渋めなイケメンとして年を重ねておりました。
寺島しのぶさん演じる40代OLがすぐに惚れ込んでしまうイケメンだけど冴えない英会話教師に、ぴったりの役。
そして、南果歩の娘役、これまたジョシュ演じる英会話教師に惚れ込んで、アメリカについて行ってしまった女の子を忽那汐里。
忽那汐里ってクールな役柄のイメージだったので、今回、ちょっとイケイケの今時女子、エキセントリック気味な役がこんなにハマるとは・・・しかも演技がすごくうまい。
寺島しのぶとの女同士のケンカシーン、負けていなかった。最近あまりテレビで見かけなかったけれど、この人は映画向きの女優さんなのかもしれない。
それと、重要な唯一の脇役として役所広司さん。ルーシーこと節子と同じ英会話教室に通う男性通称トム。
役所さんが演じているというのに・・・一向にストーリーの中心にならないこの人がどういう立場になるのか、ということが最後にわかる。
節子は、単調な生活、だらしのない生活を送りながらもエキセントリックな感情を秘めた女性。
寺島しのぶでないと演じられないという感想を持ってしまうほど、この人はこういう役が似合う。
ふた昔前だったら、大竹しのぶが似合いそうな役。桃井かおりだとちょっと洗練されてしまってまた違うイメージになると思う。(きっと短編はもっと洗練されたストーリーになっていたのかも。)
幸薄い役と言えば、木村多江さんのイメージだけれど、木村多江さんって実はそんなに不幸顔ではないと思う。
派手な水商売の女性や、イケイケの中年女性、悪女の方が実は似合うと思うんだけど・・・
寺島しのぶは、本人として映画の舞台挨拶や、映画祭などで姿を見せると実はすごく綺麗なんだけど・・・映画の中で見せる姿の生々しさはリアルにみえるのが女優さんだなぁ、と思う。
さて、そんな寺島しのぶ演じる節子は、どうやら姉にかつての彼氏を奪われてしまったらしい。
その元彼と姉の子が姪の忽那汐里演じるミカ。そのミカと同じ英会話教師のアメリカ人男性を好きになってしまう。
自分を解放させたのか、自分を見失ってしまったのか、中年女性の恋愛がちょっと哀しかった。
結局この節子は自分を追い込むような生き方をして、その結果本当かどうかわからない恋愛感情を爆発させて、いろんな物を壊してしまう。
物の見事に自分を追い込み、最終的に行き着くところにいってしまうんだ・・・と思った時に救いがあった・・・。
振り返ってみれば、オープニングは日本のうつうつとした社会の様子が映像として映し出され、
振り返れば憂鬱なマスク姿の表情の節子の目が印象的だった。
見終わってから思い返すと、印象的なシーンが目に浮かんでくる、フランス映画のような印象のストーリーと映像でした。
これを、嫌な印象嫌な登場人物。嫌なストーリーと受け取るか、映画らしい印象、と受け取るかは好みもあるだろうけれど、やはり映画は役者さんの演技で成り立つ物だと思う。
こういう役がハマって、絵になって、印象的な演技ができる中年の女優さんは寺島しのぶくらいしかいないかもしれない。
今回は、ドラマ放送のために20分ほど削ってあったので想像力もさらに必要だったのだと思う。
きっと映画はもっと生々しい部分も映像になっていたんじゃないかと想像しているので、スクリーンでちゃんとみたい気持ちもあります。
この作品は今年の春に、第70回カンヌ国際映画批評家週間部門に選出されたそうです。
日本人監督作品が選出されたのは10年ぶりだそうです。映画公開は2018年予定。

