『ひよっこ』のみね子の父が記憶喪失状態で帰ってきた。
『ひよっこ』は日本の高度経済成長という明るい一面と、日常的な柔らかい人間関係のストーリーの中に、重いエピソードがズシッと入ってくる。
普通の人の普通の人生の中にも何気なく背負っている苦悩や重い荷物・・・
そのバランスが上手く描かれていて、泣いたり笑ったりしながら観ることができる。
記憶喪失となった父が、本当の自分の場所に割とあっさり戻ってきて、
すんなり収まっているような場面を見てきたけれど、昨日は初めて父、実の今の感情が描かれた。
実の後ろ姿の泣きの演技に・・・考えさせられてしまった。
昔から、記憶喪失設定のドラマってたくさんあったし、少女漫画でも何かと言えば悲劇のヒロインは記憶喪失になったりして・・・・
最も印象的なのは、『キャンディキャンディ』のアルバートおじさん(?)だったか・・・
当時とても好きな漫画だったはずなのに、なんだかストーリー自体を全部覚えていない・・・。
でも、その当時『記憶喪失』というショックな状態を私はこの漫画で知った気がする。
最近で言えば、「韓流ドラマ」はなにかと記憶喪失になりがちだったし・・・
そこで・・・・ここでちょっとだけ『記憶喪失設定ドラマ』で私が印象的だった作品を思い返してみます。
強烈な印象として残っているのは『この世の果て』尾崎豊の「oh my little girl」が耳に蘇るドラマ。
鈴木保奈美が「まりあ」という名前の過去のある女性。
そして記憶喪失設定の(たしか、記憶喪失のフリをしている?)三上博史演じるピアニストとのストーリー。野島伸司さん脚本のとんでもなくおも〜〜い、くら〜〜いドラマでした。
結局、最後まりあが驚きの状態で記憶喪失になる・・・という結末だったような。
ただただ、ものすごかった・・・という印象が残っている。再度観るには気力と体力が必要かも。
それに対して、明るいコメディチックな記憶喪失ドラマで印象的なのは、
長瀬智也主演の『歌姫』相武紗季ちゃんが当時かわいかった。二人の組み合わせもお似合いだった・・・
時代背景や、土佐弁(?)も印象的で、明るい記憶喪失モノだった。
これはもう一度観てみたい気もする。
昔は単純に「記憶喪失」という設定だったけれど、最近では
「若年性アルツハイマー」や脳障害による「短期記憶障害」など具体的な病名でのストーリーも印象的。
映画では『50回目のファーストキス』や『私の頭の中の消しゴム』『きみに読む物語』などどれもやっぱり泣ける映画ばかり。
そういえば、今放送中のフジテレビ『警視庁いきものかかり』も渡部篤郎演じる須藤刑事も記憶喪失設定。
話を戻しますと・・・・
『ひよっこ』の実の記憶喪失は、みね子や母はもちろん、そこに大きく関わった菅野美穂演じる女優さん。の心の動きが繊細に描かれていて、
周りの気持ちが優先された描かれ方になっていたけれど、
昨日の実の「自分を知りたい」という感情と、知ることによって表面化していく苦悩と哀しみが短い時間に描かれていた。
「記憶喪失設定」という客観的な見方だけではなく、
記憶を失くすこと、思い出していくこと。そのどちらも恐怖であり、苦悩なんだということを知ることができた場面だった。
自分という存在は今ここに居るのに、自分を見ても自分じゃないような・・・
自分が嘘なのか周りが嘘なのかわからない状態で、
自分さえも自分を、信じることができずにいるのかな。
私は子供の頃に『離人症』という症状を何度も経験したことがあるのだけれど
その妙な感覚に少し似ているのかな、と思いがちょっと蘇ってきてしまった。
沢村一樹さんの泣きの演技、見守る妻の美代子。考えさせられるシーンでした。

